高知競馬のゆく年くる年  高知競馬場の大晦日は活気に満ちている。遊具広場「バババパーク」で夢中になって遊ぶ子どもたち。初めて競馬場へ足を踏み入れたと思しき家族連れが、パドックで楽しそうに〝お馬さん〟を見つめている。売店もクレープのキッチンカーも大盛況。帰省を兼ねて競馬観戦に訪れた人。高知で年越しを迎える旅打ち民。10年、20年と高知競馬を愛してきた筋金入りの常連さんと顔を合わせると、なんだかホッとする。競馬場で一言二言の会話を交わすだけ。名前も知らない。だけど言葉にできない想いを共有する同士でもある。1年を振り返りながら、そんなことを考える。2024年は本当に色々なことがあった。  高知県知事賞はユメノホノオ&吉原寛人騎手が連覇を果たした。好スタートを決めたユメノホノオは4~5番手の位置取りでレースを進め、内のガルボマンボを徹底マーク。ガルボマンボは2周目の向正面で窮屈なポジションから抜け出そうとしたが、ユメノホノオが蓋をして封じ込めた。そして後続を突き放して快勝。ロッキーサンダーが3馬身差の2着で、ロードブレスがクビ差の3着。10番人気のエイシングラスが4着に食い込み、ガルボマンボは5着に敗れた。  吉原騎手はこう振り返る。  「返し馬から本当にいい状態を確認できましたし、自信を持ってレースに臨みました。スタートが改善されつつあり、二の脚もしっかりついて、好位の一番いいところで競馬を進められました」  2着のロッキーサンダーに騎乗した赤岡修次騎手は「距離が延びてどうかなと考えていましたが、思った以上に頑張ってくれました。いい脚を使えたのでこれからが楽しみです」とニッコリ。3着のロードブレスに騎乗した永森大智騎手は「現時点ではこの馬のレースができたと思いますし、よく頑張って走ってくれました」と馬を称えた。  ユメノホノオは503キロというデビュー以来最高の馬体重でレースに臨んだ。また、3歳時のレースぶりからすると別馬のような好スタートを決めた。夏負けしやすい性質やまだまだ成長途上であることを鑑み、秋に予定していた遠征計画を白紙に戻してゆったりとしたローテーションを組んだ陣営の判断が、心身の成長と進化へ繋がったのだろう。田中守調教師いわく「もう少し体は増えると思うよ」。吉原騎手いわく「僕はまだ伸び代があると思っています。ただそこはすごく繊細なところなので、上手に育てていかないと」。5歳シーズンの初戦は、だるま夕日賞(2月16日、ダート1600m)となりそうだ。  大晦日の一発逆転2024ファイナルレースは、マジカルプリンス&永森騎手が力強く差し切った。そして元日の第1レースは、ビリーヴサンライズ&永森騎手が鮮やかに逃げ切った。好調の永森騎手、今年の抱負は「真面目に頑張ります」。その後も着実に勝利を重ねている。  元日の準重賞・初夢特別は、メイショウウズマサが単勝1・2倍の圧倒的1番人気に応えて快勝。JRAのオープンで活躍してきたメイショウウズマサは、昨春に高知の中西達也厩舎に転入。これで高知での成績は11戦9勝、2着2回。初めての準重賞制覇となった。主戦を務める岡騎手は、師匠の中西調教師に「次は初夢特別に行くぞ」と言われたときから緊張を感じていたそうで、「やっと今年が始まった気がします」と言って胸を撫でおろした。走力が高く、人間の扶助に的確に反応するというメイショウウズマサ。いい馬を託されるプレッシャーも、レースや調教で試行錯誤を重ねていくことも、岡騎手にとって糧になるだろう。デビュー4年目の2024年は58勝。岡騎手は「去年よりも勝ちたいです」と言ってほほ笑んだ。  冬場の高知競馬はレース開催日が多い。他場から「期間限定騎乗」にやって来るジョッキーは、レース及び調教において貴重な戦力となる。北海道の松井伸也騎手、金沢の吉原騎手は1月一杯で今回の騎乗期間を終える。岩手の岩本怜騎手は2月19日まで、金沢の中島龍也騎手は3月4日まで、同じく金沢の加藤翔馬騎手は3月26日までの騎乗を予定している(個々の状況に応じて期間は変更される)。  加藤騎手は昨冬に続いて、2度目の高知での期間限定騎乗に励む。昨年は高知での騎乗を終えて金沢に戻り、3月から12月の間になんと104勝を挙げた。デビュー2年目にして金沢リーディングの4位に食い込んだのだ。加藤騎手は言う。  「高知の田中守厩舎で勉強させていただいたことが、本当に大きかったです。高知競馬場は自分にとって、すごく勉強になる場所です」  若者は砂の深いコースで様々な乗り方を学び、着々と成長していくのだろう。  シンメデージーは昨年12月、吉原騎手を背に名古屋大賞典に出走。JRAの強豪を相手に激走して3着をもぎ取った。打越勇児調教師によると、次走は佐賀記念(2月6日、ダート2000m)を予定しているとのこと。高知デビュー馬として初のグレードレース制覇を目指して ── 。シンメデージーの4歳シーズンが幕を開ける。 <写真> 2024.12.31 高知県知事賞で連覇を果たしたユメノホノオ 岡遼太郎騎手