シャフリヤール Shahryar 生年月日 2018年4月13日 毛 色 黒鹿毛 生産者 ノーザンファーム(安平) 馬 主 (有)サンデーレーシング 調教師 藤原英昭(栗東) 戦 績 18戦4勝(GⅠ2勝、GⅢ1勝) 総賞金 8億481万9000円+567万ドル+5万3,600ポンド 繫養先 社台スタリオンステーション  2017年の皐月賞をレースレコードで勝利した全兄アルアインとともに兄弟でクラシックレースのレコードタイムを塗り替え、日本ダービー優勝馬として初めて海外GⅠ競走に勝利したのが今回紹介するシャフリヤール。日本、ドバイ、英国、米国を渡り歩いて獲得した賞金総額は15億円を超え、これは日本調教馬として歴代10位の記録となっている。  シャフリヤールは父ディープインパクト、母ドバイマジェスティという血統。全兄アルアインが皐月賞を勝った年に同じディープインパクトを配合され、翌年の4月13日に安平町のノーザンファームで生まれている。ノーザンファーム空港牧場での育成を大過なくクリアしたシャフリヤールのデビューは2歳10月の東京・芝1800m戦。単勝2・3倍という1番人気に支持される中、福永祐一騎手(現調教師)を背に好スタートを切って快勝。2戦目は3歳2月の共同通信杯。関東遠征は無事にクリアしたものの、レースでは前に馬を置くことができず折り合いに苦労し、エフフォーリア、ヴィクティファルスに次ぐ3着。クラシックを目指すうえで重要となる賞金を積み上げることができなかった。それでも次走の毎日杯をコースレコードで制し、皐月賞をパスして日本ダービーへ。そしてゴール前で先に抜け出していた皐月賞馬エフフォーリアを計ったようにとらえてハナ差の勝利。2分22秒5のレースレコードで世代の頂点に立っている。キャリア4戦目のダービー制覇は、フサイチコンコルドの3戦目に次いで歴代2番目の最少記録となった。  ディープインパクト産駒特有の瞬発力と確かな血統背景に更なる可能性を感じ取った陣営は、成長を促すようにゆっくりと間隔を開けながらレースを選び、4歳春シーズンの目標をドバイシーマクラシックと定める。ここでは先行策から早めに先頭に立ち、前年の米国芝牡馬チャンピオン・ユビアーをクビ差抑え込んで2つ目のGⅠタイトルを手中にした。この勝利によりロンジンワールドベストレースホースランキングにおいて7位タイとなる120のレーティングを与えられることになるが、その後は高い能力を示しながらも勝利の女神に見放されたようなレースを続けてしまう。  英国のプリンスオブウェールズSは4着。秋シーズンの最大目標であったジャパンカップは、勝ったヴェラアズールと同じ最速タイの上がりタイムを記録するも0・1秒差2着。5歳の秋シーズンは米国のブリーダーズカップ(以下BC)ターフへ遠征して3着。このレースでは同じディープインパクト産駒の英愛ダービー馬オーギュストロダン、この年の米国芝牡馬チャンピオンに選ばれるアップトゥザマークに先着を許したものの、最後は力強く伸びて日本ダービー馬としての意地を見せた。  6歳シーズンは2年ぶりの勝利を目指してドバイシーマクラシックへ挑んだが2着。一緒に日本から遠征したリバティアイランドには先着したものの、24年米国芝牡馬チャンピオンを最有力視されているレベルスロマンスには2馬身届かなかった。  そして、シャフリヤール陣営がラストランとして選んだのは有馬記念。過去68回の歴史の中で1度も勝ち馬を送り出していない16番枠を引いてしまったが、最後の直線で外から脚を伸ばしてハナ差2着。不利な大外枠スタートに加え、勝ったレガレイラとは4キロの斤量差があったことを考えると、勝ちに等しい2着で競走キャリアを締めくくった。  父はディープインパクト。競走馬として史上2頭目となる不敗三冠馬となり、種牡馬としても不敗の三冠馬を送り出したスーパーホースだ。日本で11年連続チャンピオンサイアーとなったほか、日本、英国、仏国、愛国の4か国でダービー馬を送り出すなど、その実績は枚挙に暇がない。  母ドバイマジェスティは2010年米国チャンピオンスプリンター牝馬。この年のBCフィリー&メアスプリントでは積極的な先行策から直線入り口で先頭に立ち、そのまま後続を突き放した。レース2日後には米国ファッシグティプトン社のミックスセールに上場され、110万ドルで吉田勝己氏によって購入されて日本の地を踏んでいる。その3番仔アルアインが皐月賞、6番仔シャフリヤールが日本ダービーを制したほか、2番仔ジュベルアリは繁殖牝馬として今年の中山金杯を制したアルナシームを送り出すなど、その血は日本で発展し続けている。  血統背景はもちろん、戦ってきた相手やレースの格なども申し分ないシャフリヤール。5度にわたる海外遠征含め、その生涯を通して大きく崩れたことがほとんどないという堅実性も種牡馬としてのセールスポイントになりそうだ。社台スタリオンステーション到着時には年齢を重ねても若々しさを失わない美しい馬体と、サンデーサイレンス、ディープインパクトから受け継いだ究極の軽さを具現化させたような脚捌きを惜しげもなく披露した。ディープインパクト晩年の傑作と呼ぶに相応しい1頭だろう。  初年度の種付け料は250万円と設定され、人気は上々だという。2024年にチャンピオンサイアーとなったキズナ、そして産駒デビューを心待ちにしているコントレイルとともに、ディープインパクト系を大きく発展させる一翼となってくれることに期待したい。