第69回 有馬記念 GⅠ  天皇賞・秋、ジャパンカップを連勝したドウドュースが、秋の古馬三冠を目指して圧倒的1番人気に支持されると目されていた「有馬記念」。しかしレースの2日前、右前肢跛行のためドウドュースの出走取消<1>が発表されると、一気に混戦ムードが高まった。そして注目を集めたのが、近年稀にみる高レベルと評されていた3歳馬たち。近10年で4勝、2着3回、3着1回と、3歳馬が高確率で有馬記念の馬券対象となっているデータも人気を後押しする一因となったのだろう。  1番人気は、菊花賞からの連勝を狙う3歳馬アーバンシック<2>。近10年では、サトノダイヤモンドが同パターンで有馬記念を制覇。それ以前にも、ゴールドシップ、オルフェーヴル、マンハッタンカフェ、マヤノトップガン、ナリタブライアンなどが菊花賞優勝の勢いを駆って3歳で有馬記念を制している。当然、アーバンシックも有力馬の1頭となるが、もともと折り合いに課題のある馬で、気性の幼さが解消しているかどうかがポイント。また中団より後方で脚を溜めて直線に懸けるタイプの馬なので、内枠スタート<3>から包まれて行き場を失くし、脚を余してしまう可能性も考えておきたい。  2番人気も3歳馬のダノンデサイル。皐月賞競走除外から日本ダービー優勝という離れ業をやってのけ<4>、菊花賞は1番人気を裏切る6着<5>。こちらは先行タイプの脚質なので、1枠1番スタート<6>は有利に働きそうだ。  以下、春の大阪杯でGⅠ馬の仲間入りを果たした4歳馬ベラジオオペラ<7>、GⅠレースで常に安定した走りを見せてきた5歳馬ジャスティンパレス<8>とつづき、5番人気には3歳牝馬のレガレイラが推された。  レガレイラは2歳暮れにホープフルSを制し<9>、3歳春も牡馬相手のクラシックに出走して皐月賞6着(1番人気)、日本ダービー5着(2番人気)<10>。秋もローズS5着(1番人気)、エリザベス女王杯5着(1番人気)<11>と人気を裏切ってしまったが、今回は古牡馬より4キロ軽い54キロの斤量<12>で出走できるのが魅力。ちょうど1年前、中山コースで牡馬勢を一蹴した鬼脚の再現をファンは期待した。  そして取捨選択を迷うのが、海外から帰国初戦の馬たち。ブログノーシス(6番人気)は10月末の豪州・コックスプレートで2着<13>してから中7週、ローシャムパーク(7番人気)とシャフリヤール(10番人気)は米国・ブリーダーズカップターフで2着、3着<14>してから中6週での出走となる。海外遠征の経験豊富な各馬にとって、1ヶ月半以上の調整期間は十分なはず。その実績の割に人気を落としているので、ここは逆に狙い目とも言える。  ゲートが開くとアーバンシックとブログノーシスが出遅れ、いきなり波乱を予感させるスタート。逆に好スタートを切ったベラジオオペラが先手を奪う構えを見せたが、最内からスタートしたダノンデサイルがそれをかわしてハナに立った。レガレイラも前目の位置につけ、ジャスティンパレス、シャフリヤール、ローシャムパークらが中団を追走。出遅れたアーバンシックも中団まで押し上げ、ブローザホーン、プログノーシスは後方待機、ダノンベルーガが最後方という隊列。前半の1000m通過が1分2秒9という超スローペースでレースは流れ、先行馬有利の展開に。最後の直線に入ってもダノンデサイルの脚色は衰えず、2番手を追走していたベラジオオペラも必死に粘る。そこへ外から、馬体をあわせて伸びてきたのがレガレイラとシャフリヤール。ゴール直前でダノンデサイルを捕らえ、同じ勝負服の2頭が重なるようにしてゴール板を駆け抜けた。写真判定の結果、内のレガレイラがハナ差の勝利。シャフリヤールは惜しくもラストランで有終の美とはならなかったが、不利な大外スタートからダービー馬の底力を存分に発揮した。  3歳牝馬の有馬記念優勝は、1960年のスターロツチ以来64年ぶり2頭目の快挙。ゴール前の見応えある大接戦を含め、歴史に残る有馬記念となった。